ローラー講座

美しい塗装の為のSTEP1<ローラー編>ローラーの製造方法

レギュラーローラーコア部の説明

レギュラーローラーコア(芯)に関しては現在2種類のものが存在しています。
まずは従来からある『紙菅タイプ』、そして現在ホーム関係でポピュラーな『PPタイプ』の2種類です。
前者の紙管タイプは古くから使用されており機能面や実績もかなり確立したものになっています。対してPPタイプはここ10年ぐらいから使われており、どちらかと言えばプロ向けではなく一般ユーザー向けがほとんどとなっています。
どちらとも長所がある反面マイナス面もあり、現在では甲乙つけがたい所です。
紙菅タイプは、変形が少なく安定したタイプです。PPタイプに関しては、プラスチックの押し出し成形品を多く使用しているため、反りや変形公差などに若干問題を抱えています。
紙菅タイプの弱い面は、原材料が紙を使用している為、PPタイプに比べ耐水性に若干劣る所があります。
それに対してPPコアはプラスチックを使用している為、耐水性、耐溶剤性には問題は出にくくなっております。製造方法として、紙菅タイプでは熱硬化性樹脂を含ませた紙を5層にスパイラル状に38φのシャフトに巻きつけながら乾燥炉の中を通して乾燥させ、乾燥炉から出てきた時点で接着材を塗布しその上に生地をスパイラル状に巻き付ける方法を取っています。
PPタイプは接着が出来ないため、溶着という特殊な製法を使用しております。これはPPパイプの表面だけを熱で溶かし、PP材が溶けている間に生地をスパイラル状に溶着させる技法です。この方法は接着材を使わないため、コストが安く出来ますが、その反面設備費用が掛かるというデメリットがあり、PPパイプ自体も特殊なためその分のコストも掛かってきます。
紙菅タイプに関しては、紙菅自体を単一工場内で製作出来、設備費用も既存にある機械を使えるため安く導入出来るメリットがあります。ただ、紙菅を製作するにあたり紙に熱硬化性樹脂を使用するための費用が掛かる為、結局は紙菅タイプ、PPタイプどちらともコスト的には差はあまりでない状況にあります。
国内ではレギュラータイプ(38φ)の他にスリムタイプ(23φ)(大塚刷毛ではライトローラー)がありますが、これに関しては紙菅タイプしか存在しておりません。また、製造法については先に述べた通り紙菅タイプと同じ製造方法を取っています。

スモール&ミドルローラーの説明

スモールローラー、ミドルローラーとも生地の接着方法はレギュラーと同じ2種類です。(接着剤を使用したタイプと熱融着タイプ)
部品構成は双方とも、コア部のパイプ部・内部部品のエレメント部・キャップ部の3品で構成されています。素材はコア部パイプの材質が、接着剤使用タイプは接着性が良く耐溶剤性・耐候性に強い『ナイロン材』を使用し、熱融着タイプは『PP材』が使用されています。
優劣はつけがたく双方とも接着力にほぼ差はありません。生産ロット数によって弱冠コストに影響が出る程度です。(かなり以前にはPPタイプの方が溶剤に対し強いといわれました)

ミニスモールの説明

この製品については国内メーカーすべてが接着剤使用スタイルをとっております。

美しい塗装の為のSTEP2<ローラー編>生地組成の違い

編物(ハイパイル)
裏地に短繊維のパイルを編み込んだもの。
塗料含みに優れるが短繊維のため毛切れ下が起こり易く泡も立ちやすい。
織物(ウーブン)
織物裏地に長繊維のパイルを織り込んだ織物。
長繊維の織り込みのため生地密度が高く、毛抜けが発生しにくい。気泡が入りにくいので泡立ちも少ない。(無泡タイプ)
内・外装用として幅広い用途で使用できる。
糸を多く使用するので生産コストが高い。

美しい塗装の為のSTEP3<ローラー編>生地糸の材質からくる用途の違い

アクリル繊維
繊維自体が軽く、繊維が柔らかくしなやかなので、ローラーの転がし感に優れ、耐酸性、耐アルカリ性に優れている。塗装用ローラーとしてさまざまな塗料に幅広く対応できます。
ポリエステル繊維
繊維自体の強度が強く耐久性に優れ弾力性、復元性に優れた繊維なので高粘度塗料などにも適しています。
ナイロン繊維
合成繊維の中では最も強度があり塗料離れに優れ弾力性にも優れた繊維になります。ただ酸系に弱い繊維なので、使用出来る塗料が限定されます。
ナイロンの特性を利用し防水材などに適した繊維です。

※一般的に、ハイパイル系はポリエステルとアクリルの混毛が多く、ウーブン系ではポリエステル繊維のみの仕様が大半を占めます。また、繊維の特徴を活かして繊維の太さ(デニール)や断面の違い・糸の使用比率を替えることで様々な種類のローラーが生産されております。

美しい塗装の為のSTEP4<ローラー編>毛丈の違いからくる用途の違い

短毛(4~6mm程度)
主に内装用。鉄部塗装の仕上げ用としても多用されている。
毛切れや毛抜けが発生した場合でも目立たないよう生地の色は『白』が一般的ではあるが中毛など他の毛丈とのシリーズ化している場合も多い。
中毛(10~13mm)
万能用(内・外装用)、(サイディング程度の凹凸)
長毛(20mm以上)
主に外装用。凹凸がある塗面にも対応できる。
塗料含みに優れているので作業性重視タイプ。

美しい塗装の為のSTEP5<ローラー編>塗料とローラーの選定

水性塗料
塗料自体の粘度が低いので泡が立ちやすく、飛散も多くみられる塗料です。
現在のローラーの中ではマイクロファイバー繊維を使用しているローラーがお薦めです。
マイクロファイバー繊維は含み、吐き出しに優れそれに相反して保持性にも優れている繊維です。
低粘度塗料であってもタレ落ちが少なく、飛散も極めて少ないローラーです。
ただし、繊維自体が細いため中粘度から高粘度塗料には適しておりません。
弱溶剤型塗料
(ウレタン、シリコン、フッ素)
塗料は中粘度タイプが多く最もポピュラーな塗料です。
ローラーは塗面にもよりますがハイパイル、ウーブンのどちらでも問題なく塗れます。ただし塗面が気になる場所であればウーブン系がお薦めです。
強溶剤型
(防水材、重防食など)
塗料粘度が高くハイパイル系はお勧めできません。
腰があり、溶剤にも強い太めの繊維を使用したウーブン系のローラーがお薦めです。。
特に防水材には中毛以下の毛丈(13mm程度以下)がお薦めです。

美しい塗装の為のSTEP6<ローラー編>マイクロファイバー繊維のローラーについて

主な特徴
  • どんな塗料でも飛散が少なくキメ細かで抜群の仕上り!
  • 一度の塗料含みで塗り拡げられる面積が格段に広い!(吸水性抜群)
  • 低粘度の木部用ステイン系塗料でも塗料ダレ・泡立ちが少ない!
  • 一般のローラーに比べ、毛切れ・毛抜けが極めて少ない!

※ただし、中国製にみられる生地の密度が少ない製品の場合は塗料粘度が高い室内用塗料などには『滑り』が起きてローラーが回転しないので不向きである。 

短毛
内装用 …… 最高級の仕上がり。
中毛
内・外装用、木部用 ……中毛でありながら短毛並の仕上がり感。
長毛
主に外装用 …… 塗料含みに超優れているので作業性に『差』がつく。また、毛の形状記憶性もあるため波トタン塗装用としても高評価

美しい塗装の為のSTEP7<ローラー編>プロが重視するローラーの品質項目

1、含み~吐き出し
密度の高い生地を選びましょう。
ただし、生地表面が硬くなると含みが低下し仕上がりも粗くなります。
内装用の場合は柔らかな生地を選ぶことがベスト。
2、無泡&低飛散
織物(ウーブン)タイプを選びましょう。
現在は織物タイプが主流です。『SUPER MULTI』『SUPER HIT』『ウェーブ』も織物&無泡&低飛散です。
3、仕上がり
用途によって腰の強弱はありますが柔らかな生地のものを選びましょう。
毛切れ、毛抜けが起こりにくい織物(ウーブン)タイプがお薦めです。