刷毛講座

美しい塗装の為のSTEP1<刷毛編>塗装の基本手順の紹介

美しい塗装の為のSTEP2<刷毛編>刷毛の原料に使われている主な毛材の紹介

馬毛

以前には多くの刷毛に使用されておりましたが近年では一般用、プロ用共に減少傾向にあります(原産地は主に中国)。『振り毛(たてがみ)』、『尾毛』、『胴毛』など、毛の生えている部 分によって用途分けされます。
主に油性用として使われますが、毛のグレードは『ピンからキリまで』です。同じ部分であっても太さや長さなどによって数種類に選別され、高級品用から普及品用に分けられます。
一般的な刷毛は『尾毛』を中心としたものが多く、製品の多くは数種類を混毛して出来上がっております。毛丈が短い工作用刷毛などには『胴毛』を使用します。
簡単な見分け方 = 黒っぽい毛、茶色っぽい毛は大体が馬毛です。(全てではありませんが)

馬毛使用の刷毛(一例)

山羊毛

現在では多くの刷毛に使用されています。(原産地は主に中国)
毛の生えている部分によって用途毎に振り分けされます。(尾っぽが主)
毛質は柔らかく、天然の毛先を生かして主にニス用として用いますが、毛丈が長く、弾力性ある良質の毛はペイント用(油性)としても水性用としても使われています。
簡単な見分け方 = 白っぽくて柔らかい毛は大体が山羊毛です。(全てではありませんが)

山羊毛使用の刷毛(一例)

豚毛

毛質は硬く、弾力性があるので主に「ダスター用」として使用されますが、耐久性にも優れているため『防虫防腐用』として荒材などへの塗布用としても使われています。また、馬毛や山羊毛製の刷毛の「腰毛」としても使用します。(原産地は主に中国) 簡単な見分け方 = 硬くてツヤがある黒い毛、薄いベージュ色の毛は大体が豚毛です。

豚毛使用の刷毛(一例)

化繊

獣毛と比べ毛のもつれが少なく『スムースなタッチ』ができるので塗り易さが一番の特徴です。また塗料離れが良いため水性塗料など速乾タイプの塗料に向いています。毛先が加工できたり、太さの調整、色付けなども可能なのでいろんなタイプの製品が作れるのも特徴です。また品質の均一化がはかりやすいことなどから近年では刷毛作りの主流になっています。

化繊の場合、塗料含みの点においては獣毛に比べれば若干は低下しますが、毛の断面を馬蹄形にし、表面をキューティクル状に加工することでそれを補っております。また獣毛の天然毛先の毛はコストが高いものですが、化繊は毛先をテーパー状に加工することが可能なので低コストで良質の毛に生まれ変わることもできる優れものです。

化繊使用の刷毛(一例)

美しい塗装の為のSTEP3<刷毛編>刷毛の用途分類について

水性用
塗料の乾燥時間が平均約1時間と、比較的早いため含み残りが多い獣毛製よりは塗料離れに優れた化繊刷毛の方が何といってもベストです。
特に水性ウレタン塗料などは乾きが一段と早いので獣毛100%刷毛ではいわゆる『塗料溜まり』が起こりやすく、更には塗っていて『強く引っ張られる感じ』がするのでつい塗りやすくするために必要以上に薄めてしまうことにもなりかねないので決してオススメとはいえません。
油性用
全体的には塗料の粘度が高いためコシの弾力性は水性用よりもやや強めになっています。味合いが違ってきます。 また、塗料の乾燥時間は平均約4~6時間のため含み残りの点においては獣毛製でも特に問題がないので現在でも馬毛製が中心で、時に山羊毛を使用するタイプなどもあります。味合いが違ってきます。 しかし近年では使いやすさを重視した化繊製、また使いやすさと含みの良さを兼ね揃えた混毛タイプ(化繊+山羊)などが推奨されております。
ニス用
滑らかな表面仕上げを目的として塗るのがニス塗りです。したがって刷毛には柔らかい毛質の山羊毛を使用しているものが大半で、ハケ目が残らないよう山羊毛の天然毛先の部分を使用しています。
毛質が柔らかいので毛丈全体を短くしてコシが出るようにしているのも特徴です。また油性用ハケと同様に近年では化繊を混毛して塗りやすさをアップさせた製品も開発・推奨されております。
万能用
本来『万能』であれば水性も油性も、そしてニスも塗れなければいけませんが、残念ながら現在市場に出ているものは水性と油性は塗れるがどちらかといえばニスには不向き、というものが意外に多く、消費者に対しては不親切な表現となっております。
水性と油性だけなら化繊100%刷毛で問題ありませんが、ニスもカバーするのであれば化繊に山羊毛が混ざった刷毛の方がベストといえます。
尚、『多用途用』というのは水性多用途塗料に向いている刷毛であり、『万能用』とは若干意味合いが違っています。

美しい塗装の為のSTEP4<刷毛編>刷毛の品質(良否)について

製品を一見しただけで品質の良否を判断するには難しい分野です。(要経験)
簡潔には以下の4項目をチェックすることで大体の目安になるかと思います。

1、刷毛全体の「まとまり」が良いこと

  • 使用中でもセロハンカバーをはずした状態でも全体が末広がりにならず、逆三角形の形が保たれているものが良い。(境界線が思うように塗れるもの)
  • クセのない良質の毛で、毛先がテーパー状の毛を使用していれば必然的に綴じている根本部分より穂先のほうが細くまとまっております。

2、毛先が滑らかでハケ目がでにくいこと

  • 毛先がテーパー状に滑らかになっているものが良い。塗り上がり面が滑らかできれいに仕上がる。
    このような刷毛は毛先の肌触りが良いので触ってみれば判断できます。
  • 逆に『ブツ切り』、『両切り』といわれる刷毛はハケ目がでるので仕上がりが悪く、使用感も良くありません。

3、塗料を良く含み、均一に良く吐き出すこと

  • 一度の塗料含みで沢山の面積が塗れるので作業効率が良くなります。条件としては、十分な毛量と良質な毛であることが前提となりますが、見ただけで判断するには難しい項目です。
  • 毛量に関しては外見上、毛玉すべてが毛の『本綴じ』と呼ばれるものが良く、毛玉の中に芯板が入っている『金巻』は普及品となります。
金巻
本綴じ

4、コシに適度な弾力性があること

  • 塗面に押し付けられたハケは毛が屈折していますが、塗面から離した時にはきちんと回復していなけ ればなりません。屈折したままでは右から左、左から右への折り返し塗りがしにくく、作業に支障が でてくるので『腰』は大切なチェック項目です。
  • 従来は油性塗料に比べ水性塗料は粘度が低かったため水性用の刷毛も『腰』はやや弱目に作られていましたが、近年では水性塗料の粘度が全体的に高くなっているため水性用刷毛で、腰具合はやや強目に作られています。